~知財の評価って、なんだろう?~

2020年3月26日 室 健一

 世界的なコロナウイルス感染拡大の影響で、2020年3月は、日本の多くの学校で休校措置が取られていた。筆者の住む地域もその例に漏れず、小学生の息子達は毎日自宅学習を行い、その他の時間も外出は極力控え、家に籠る時間が多かった。家の中で遊ぶことと言えば、ゲームやスマホ、ネット等といった遊びが多くなるが、その他にもプラモデルづくりをして過ごしていた場面もあった。作るプラモデルは、親の趣味を引き継いだのか、ガンプラ(=アニメ・ガンダムシリーズのプラモデル)がメインだ。

 ファーストガンダム(ガンダムシリーズは多くアニメ化しており、1979年放送の最初のガンダムをそう称する)世代の筆者の小学生時代は、まさにガンプラブームの時代であり、模型店に朝早くから並んだり、穴場の模型店を探したり、苦労して手に入れたことを覚えている。その時代の旧キットは可動部分も少なく、組み立ての際も接着材やプラモカラー(別売りの塗料)等も必要だったが、最近のキットはそうした手間は省きながらも(それはそれで物足りないのだが)、見た目がよりアニメに近く、可動部分も多い機体となっており、久々に見るとその変化に驚かされる。

 このガンプラ、このコラムを書いている2020年がちょうど生誕40周年だそうだ。

 この間、その商品群の収益性を守り続けてきた要因は多々あると思うが、その一つに商標権がある。権利期間が基本的に20年で満了する特許権とは違い、商標権は更新が可能であり、長年その商標登録を維持することで、ブランドイメージを確立することに貢献している。

 特許権と商標権のこうした存続期間の違いは、当然、権利活用の面でも差異が出てくる。すなわち、権利満了までの20年間を見据えて、その間に市場の優位性を確保しようとする特許権と、権利期間に縛られずにブランドイメージの定着すなわち購買規模の安定継続を図る商標権とでは、活用の仕方が異なる。あるいは、両者を補完関係として捉えて複合的に活用する、いわゆる知財ミックス活用もある。もちろん、他社に対する使用許諾や差止及び損害賠償請求といった両者に共通する従来型の権利を行使する活用もある。

 このように知財権の活用といってもその態様は様々であり、また活用に対するイメージも権利に絡む当事者であったり第三者であったり立場によって異なり、判然としないところも多々ある。このため、事業における知財の権利化の必要性は認識しつつも、その活用による貢献度を定量的に説明するのは、なかなか難しいところもある。

 そこで現在、事業投資対効果の一つとして、知財評価が様々な場面で行われている。評価のアプローチとしては、権利者の保有する知財権全体の評価と、個々の知財権の評価があるが、この個々の評価がなかなか難しい。というのも、前者であれば、出願件数や登録件数といったわかりやすい客観的な数値データがあるが、後者に関しては、何を物差し(指標)にするかという点がまず問題となる。当然、評価者によってその指標は様々であり、例えば、評価の対象となる知財権に紐づく使用許諾の有無であったり、他社出願の権利化を妨げるために用いられる被引用文献としての引用回数であったり、あるいは、技術の先進性であったり、評価の観点が異なる。その結果、評価者から価値が高いと評価されても、権利者から見ればそうでもないといった状況も起こり得る。当然、その逆も然りである。

 この点、権利者の立場に焦点を当てれば、特許や商標を出願する、権利として取得・維持するということは、コストのかかることであり、ある意味で投資である。とりわけ特許の場合、出願、権利化、権利化後の維持など、各ステージで多額の費用を要する。このように相応のコストをかけるからには、その目的、すなわち収益の期間と規模の狙いがあるはずである。そして、当然、そうした狙いは競合も含めた外部の者からは把握することは難しい。

 権利者が、自己の知財を事業投資として評価する場合は、その目的に適っているか、その目的に応じた役割を果たしているか、言い換えれば当初狙いに沿った収益性を実現できているか、という点で捉えることも重要である。特に特許の場合、研究開発や事業の計画に連動するものであり、各々の特許の狙い・目的はその時々で変化するケースもある。そうした変化を常にウオッチし、その特許の役割・機能をマネジメントすること、個々の権利自体を取捨選択すること、が、自身の知財の価値を高めるうえでも重要である。

 知財権を保有するということは、権利者にとって、目的に適っていれば財産になるが、そうでなければ負債にもなり得るのである。

以上

著者紹介
室 健一 Muro Kenichi

専攻は地球物理、素粒子論。
官公庁、特許事務所、精密化学メーカー知財部を経て、現職に至る。
趣味は、海外の離島めぐり、書店めぐり。