オンライン・非対面のコミュニケーションに思うこと

2021年1月8日 坂本 仁美

 2020年、COVID-19感染拡大により、様々な分野でのデジタル化が進み、テレワークの環境が整った今、仕事をするだけなら在宅でも大きな支障はないと感じる。ビジネスチャット、Web会議システム、グループウェア、ファイル共有システムなどを多くの人が使いこなすようになってきた。

 そしてプライベートなミーティングや飲み会がオンライン化する、ビジネスでのやり取りがチャットでも気軽に行うようになる等、急速にコミュニケーションの取り方が多様化し始めてきた。かくいう私も、思うように外出が出来なかったからこそ、YouTube、Zoom、Facebook上での配信に参加するようになった。非対面であっても得られる臨場感や密度は相当に高いものであったと感じる。

 しかしながら、仕事でもプライベートでも、何気ない雑談やしぐさ、場の空気感といった面で意図が伝わらず満足感が得られない、しゃべった際に相手のあいづちやうなずきがなく承認欲求が満たされない、と感じたのはおそらく私だけではないだろう。オンラインの画面上だけでは、何か十分に伝わらない、伝わってこない。

 それは私が日本人だからなのか。国際的にみると先進国中、日本のデジタルランキングはわりと下のほうらしい。スイスの経営大学院IMDが発表している「世界デジタル競争力ランキング」(2020)において日本は世界全体(63ヵ国)で総合ランキング第27位となっている(図1)。この5年ほど、日本は20位台をうろうろしている。このランキングはデジタルに関する知識面、技術面、変化対応のスピード、の3つの指標から評価されている。



図1 IMD「世界デジタル競争力ランキング」(2020) 数値は1位を100点とした点数
出所: https://www.imd.org/wcc/world-competitiveness-center-rankings/world-digital-competitiveness-rankings-2020/


 なんとなく日本のデジタル化はもっと進んでいたと思っていたので、何やらあまり気分がよくないデータだが、長らく日本人をやってきた立場としては、デジタル化のランキングは上位でなくても対面ならではの細やかな機微を敏感に感じとれる力は日本人ならではのものだ、それは美学、誇りたい、とも思う。

 劇的な公私コミュニケーションのオンライン化に日本人が何を思うのか、は様々なデータとして公表されている。例えば日経新聞2020年12月21日掲載記事(日経BP社調査)によると、2020年4月と10月の比較では、「テレワークをしていないと答えた人の、理由」に違いが出ている。要するにIT機器や労務関連制度は整ったけれど、気持ちの切り替え、コミュニケーション、生産性への疑い、などの自分自身の問題が課題だという。下記図2で下のグラフ(オレンジ色)のほうが伸びている項目がそれだ。



図2 テレワーク促進の課題はルール整備とコミュニケーションにある
出所:日本経済新聞2020.12.21「テレワーク成功の勘所(24)「だから私はテレワークしない」普及を阻む3大理由」(注1)
https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=141&ng=DGXZQOFK141JS0U0A211C2000000


 実際にテレワークを体験していない人たちなので、食わず嫌いなのかもしれない。しかし半年からテレワークやオンライン学習導入のニュースや口コミを聞いてなお、コミュニケーションに課題がありそうだと答える人が増えた理由はなんだろうか。文化論、コミュニケーション論、医学的分析、など理由はいろいろありそうだが、私の肌感覚的には、例えば今までのグループ会議では、発言をしなくても、相手の表情から察する、空気を読む、といった非言語コミュニケーションが深く根付いていて、それらが日本人同士のコミュニケーションにおいて非常に重要な役割を果たしていると考えられるが、それが十分に伝わらないが故の「コミュニケーションに課題」ではないだろうか。

 アメリカの心理学者アルバート・メラビアンは「相手に伝わるのは言語情報がわずか7%、非言語である聴覚情報が38%と視覚情報が55%で非言語が9割以上」という「7-38-55ルール」【メラビアンの法則】を1971年に発表している。欧米含めた他の国の人たちは、オンラインで苦労していないのだろうか。図1はその差なのだろうか。(「非言語コミュニケーション」聖文社 A.マレービアン著 西田司【ほか】共訳(1986))

 対面でのコミュニケーションで相互に理解し、承認し、信頼関係を構築してきている間柄がスタート地点であっても、オンラインの非対面コミュニケーションでは、ある種の難しさを感じている人がいる。ましてや、そこまでに至っていない間柄で非対面のコミュニケーションをしなければならない場面を強いられる状況から、意図したことが伝わっているのか、理解されているのか、と感じて、コミュニケーションが難しいと思う人が多いのだろう。例えば新入社員や中途採用者で所属期間が短い人などはどう感じているのだろうか。

 私もまた、テレワークを時に実践しながら、非対面コミュニケーションにどうしても満たされない思いを感じることが多い。しかしこの時代においてはそれを拒むわけにはいかないし、非対面だからこその便利だと思うことも多い。今後は目的に併せて対面と非対面コミュニケーションツールを意識的に賢く選択しながら活用していく時代になっていくのだろう。

注1:調査は日経BP総合研究所イノベーションICTラボが日経BPのデジタルメディアの読者・会員を対象にウェブサイトを通じて2020年10月に実施した。「直近1カ月において、あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」と聞き、「利用していないが、今後利用する予定」もしくは「テレワーク可能な仕事であるが、テレワークを利用していないし、今後も利用する予定はない」と答えた人に、その理由を尋ねた(複数回答可)。

著者紹介
坂本 仁美 Hitomi Sakamoto

実は健康オタクである。知らないことを知りたい欲求と好奇心から調査の世界に流れ着いた。
大学時代は藝術を専攻し、化学メーカーに就職。その後経験値を増やして、現在に至る。
人が好きなので、密なコミュニケーションを切望している今日この頃。