コラム

Controlled Circulationと女性専用車両

2019年9月13日 NEW! 丸﨑 恒司

 Controlled Circulation(コントロールド・サーキュレーション)という言葉をご存知だろうか?ネットで検索すると、こう書かれている。


 「特定のターゲットに絞って無料で雑誌の郵送配布を行うことによって、効率よく広告収入を得ようとする印刷メディアのビジネスモデルのこと。ラック配布や手渡し配布など不特定多数に配布するのではない点がフリーペーパーとの違い」(Wikipedia、Weblio辞書などから筆者編集)。


 30歳くらいで、まだ自分の進路に迷いを持っていた頃、このようなControlled Circulationの発行元の会社への転職を考えたことがある。その際、そのビジネスモデルについて説明を聞いた。


 例えば、半導体製造技術者向けの雑誌であれば、業界で著名な技術者の寄稿など、当該技術者が読みたいと思う内容を揃えて会員を募る。会員には毎月無料で当該雑誌を郵送する。ここで一定の会員を獲得すると、この雑誌は半導体製造技術者限定で読まれているもので、ここに関連広告を掲載すれば広告効果は高い、よって高い広告料をください、というのがそのビジネスモデルである。説明してくれた発行元の社長と思しき人は、「米国などでは以前からあるビジネスモデルで、日本でも絶対成功すると思った」と発行元に参加した動機を語っていた。


 結局、私はその会社に転職することはなかった。あれから15年くらい経つが、今の所Controlled Circulationのビジネスモデルが日本で定着したようには見えない。その証拠に、そのような雑誌で現在も残っているところは非常に少ない。


 しかし最近になって、実は同じビジネスモデルではないか?と思える事例が街中で見受けられた。それが鉄道の“女性専用車両”である。車体への派手なラッピング広告などが以前から気になっていたが、よく考えると特定の属性の人だけを集めている、という点がControlled Circulationの会員と共通する。ということは、当該特定の属性の人向けに特化した商品に関する広告、この場合は化粧品のそれなどは女性専用車両に掲載するとそれだけ広告効果が高くなる、つまり広告料を高く設定できる、ということになっているのではないか?


 この仮説を確認するために、Webから集められる情報の範囲ではあるが、鉄道の一般車両と女性専用車両の広告料を比較してみた。以下にその出典と比較結果を示す。

表1 女性専用車両広告のまど上ポスターの広告仕様・広告料金など


表2 一般車両広告のまど上ポスターの広告仕様・広告料金など

(出典)いずれもhttps://www.oricom.co.jp/special/ryokin/index.html にアップロードされているpdfファイルより一部を抜粋、比較のため行と列を並べ替え


 完全に同じ条件の例を探すのが困難であったので、一部想定が入るが、上記の表1,2の例、すなわち、まど上ポスター、サイズ280×515mm(28.0×51.5cm)、期間1か月、で比較すると表1の「120万円」を上回る料金が表2にないので、確かに女性専用車両の1枚あたりの広告料は一般車両のそれより高そうである。またいずれの鉄道会社向けの広告であっても、女性専用車両には特別の料金設定がされていた。このことから、少なくとも一般車両と女性専用車両では、広告媒体としては異なった商品として捉えられているのは間違いがなさそうである。


 以上から、仮説の通り、Controlled Circulationと同じビジネスモデルが女性専用車にも成立していそうである。


 一方で、Controlled Circulationとして雑誌を無料で受けとっている会員は、当該雑誌の記事を読みたいという理由で自発的に会員になっているのに対して、女性専用車両に乗っている人の多くは止むなく女性専用車両に乗っていると思われる。この点は、両者は相違しているかもしれない。しかしWebで調べてみると、女性専用車両の広告を見て、ある仕事で活躍している女性が多くいることを知り、自分もその仕事に応募してみた、など、女性専用車両の広告が乗っている人にプラスに作用した例もあるようである。


 そうすると、ある属性の人のみを集めた車両を作り、当該属性の人向けの広告を載せる、という手法は、単に広告媒体の提供者が高い広告料を取れる、というのみでなく、当該車両を利用する人にとってもメリットがあるのではないか?という気がしてきた。


 そう考えると、女性専用車両に限らず、特定の属性の人、例えば30歳以下専用などの車両を設定するのも、ビジネスモデルを新たにつくるという観点でだけ見れば、悪くはない考え方なのかもしれない。カラフルな広告の女性専用車両を見て、進路に迷っていた自分を思い出しながら、そんなことを考えた。


著者紹介
丸﨑 恒司 Marusaki Koji

電機メーカーの技術者を経て、知的財産の世界に。デバイス実装技術、デバイス製造プロセス、無線通信(標準必須特許)等に係る出願・権利化、一部ライセンスに携わる。
知財屋としての存在意義をどのように出すか?を日々模索中。プライベートでは、子供二人(息子、娘)に対して、親父としての存在意義をどのように出すか?を 日々模索中。

Controlled Circulationと女性専用車両
2019年9月13日 NEW! 丸﨑 恒司
「開発」とは何か?
2017年6月14日 丸﨑 恒司
「ノリ」の変化を見抜こう!
2016年8月2日 丸﨑 恒司