ブランド品は、優れた品質?

2019年11月22日 河野 博信

 日本を代表する高級ブランド街、銀座。日鉄総研株式会社の本社から歩いて数分の場所にあるこの街には、世界中のさまざまな有名高級ブランドの店舗が並んでいます。1つ1つの店舗ビルのデザインは個性に溢れ、それぞれのビルが自己のブランドコンセプトを自由に且つ上品に表現しつつ、それらが立ち並ぶ風景全体として「銀座」という1つのブランドをしたたかに作り上げています。

 この「ブランド」という概念。企業にとって事業戦略を考える上での重要な概念ですが、知的財産部門との関連では主として商標の管理業務に結びつきます。

 商標法上の商標は、人の知覚によって認識することができる文字や図形、立体的形状等であって商品等に使用するものであり(*1)、商標を保護することによって業務上の信用の維持を図ることが商標法の目的の一つとされています。

 この商標には、主として以下の4つの機能があります(*2)。

<自他商品識別機能>
この機能は、商標が自分の商品と他人の商品とを区別するための標識として働く、というもので、商標の機能の中で最も基本的なものです。したがって、例えば、ある商品について他人の商標とよく似たデザインの商標は、この自他商品識別機能を有することにはならず、商標法の保護対象からも外れてしまいます。

<出所表示機能>
この機能は、同じ商標が付された商品は、同一の製造業者によって作られた商品あるいは同一の流通ルートを経た商品であることを示す、というものです。他人の商標を勝手に使用する模倣品業者は、主としてこの出所表示機能を横取りする者です。このため、例えば、ヴィトンのバッグを買おうとする人は、そのバッグに付された「Louis Vuitton」という商標が本当にこの出所表示機能を有しているものなのか(要は、本物なのか)を注意する必要があります(もっとも、模倣品であることを承知で購入する人も一定数いるかもしれませんが・・・)。

<品質保証機能>
これは、ある商標が付された商品は、一定の品質や性能を有している、ということを示す機能です。商品を作るメーカーとしては、常日頃この機能に磨きを掛け、消費者からの信用を失うことのないよう努力していることと思います。

<広告・宣伝機能>
この機能は、商標が使用されて信用が蓄積されると、その商標自体が一つの販促ツールのようになる、というものです。つまり、ある商標が付された商品を使用したことのない人に対して、その商品の購買意欲を起こさせる、まるで催眠術師のような働きを商標がするということです。単に知っているからという理由で消費者がブランドを選択する場合、この広告・宣伝機能が大きな働きをしているといえるでしょう。

 以上に述べた商標の機能は、それぞれバラバラに生じるわけではなく、新しいブランドを立ち上げてから育成する過程において順々に生じていくものです。このことは、必ずしも高級ブランドに限られず、低価格帯のブランド(例えば、1個20円のチロルチョコ)にも当てはまります。このため、商標を保有する企業としては、安定した収益を維持拡大させるために、粘り強くその商標の機能を引き出す努力を続けなければなりません。

 さて、一般生活においては、例えば出身大学名や現在又は過去の職業や肩書など、人に関してその所属や所有物が、あたかもその人自体がブランド化されるための商標のように認識されることが、しばしば生じているように思います。が、そういった類の「表面的な」ブランドは、人そのものではなく、その人の周辺情報を単に示しているに過ぎません。従って、少なくともそのような表面的なブランドは、必ずしも上で述べた品質保証機能を有しているとは限らないこと(例えば、名家出自の人=上品な人柄とは限らないこと)に注意しなければなりません。

 週末は歩行者天国となる銀座では、今日も多くの人がそれぞれ好みのブランドを身に着けて歩いています。

 あなたがお好きなブランドは何でしょうか?
 そして、そのブランドがお好きな理由とは?

*1 : 商標法第2条第1項には「この法律で「商標」とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であって、次に掲げるものをいう。 (1)業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの (2)業として役務を提供し、又は証明するものがその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)」と規定されています。
*2 : 商標(第5版) 網野誠著 有斐閣

著者紹介
河野 博信 Kohno Hironobu

機械・構造系、化学系、物理・材料系など幅広い技術分野における知財情報分析を行う。企業発明者としての経験と知財の権利化に関わる実務者としての経験とを併せ持つ。座右の書は、「努力論(幸田露伴)」と「自己信頼(エマソン)」。主な趣味は、読書とジョギング(社内ジョギング同好会の現会長)。