家計簿・家計調査で気づくコロナ禍ライフ

2021年3月3日 肥田 純

 2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発令されてから、間もなく1年が経過しようとしています。日本におけるコロナ禍の起点をどこに置くかについては、様々な考え方があるものと推察しますが、すでに1年近く耐え忍ぶ日々が続いているという感覚は誰もが共通して抱いているものでしょう。この間、ニューノーマルの到来を予感させるものとして、我々の生活様式、購買行動にも大きな変化がありました。

 先日、総務省より発表された「家計調査」の2020年12月の調査結果によると、新型コロナウイルスの感染拡大により消費が大きく落ち込んだものとしては、いわゆる外食に相当する「食事代」「飲酒代」、交通費の「鉄道運賃」「バス代」「航空運賃」、観光・エンタテインメント関連の「宿泊料」「パック旅行費」「映画・演劇等入場料」「文化施設入場料」等が挙げられています。いずれもコロナ禍において特に苦しい状況に置かれている業界が収入源とするものであり、新型コロナウイルスの影響は消費者のお金の使い方にも如実に表れているといえます。


表1 コロナ禍で消費が落ち込んだもの(2020年12月)

出典:総務省統計局「新型コロナウイルス感染症により消費行動に大きな影響が見られた主な品目など」2021年2月5日(*1)より抜粋


 実は筆者自身、かれこれ15年以上家計簿を付け続けています。そこで2019年と2020年の支出状況を比較してみると、「家計調査」の調査結果と同様の傾向を示しているものもあれば、異なった動きをしているものもありました。


表2 筆者の家計簿において支出の変化が大きいもの(2020年)


 そもそも「飲酒」を「外食」と切り離して家計簿に記録しているところに、筆者の元来の性格とライフスタイルが現れてしまっている気がしなくもありませんが、「外食」「飲酒」「交通費」等は「家計調査」同様に大幅減となっていました。

 一方で、「家計調査」における「授業料等」「書籍・他の印刷物」は対前年比でそれぞれ14%減、2%減のところ、筆者個人の支出としては大幅増と真逆の傾向を示しています。この点については、自宅で過ごす時間が増える中で、オンライン講義を受講する等の生涯学習に注力したこと、講義を受ける喜びに改めて気付いてしまったこと、の影響が大きいものと考えています。

 また、コロナ禍でヒットしたものとしては、Nintendo Switchの「あつまれ どうぶつの森」等のゲームソフトが最たる代表例として挙げられますが、自宅で楽しめる娯楽という共通項があるにもかかわらず、「書籍・他の印刷物」への出費が伸び悩んでいる点については考察の余地がありそうです。「紙の書籍・雑誌はアルコール消毒が難しいのに対して、スマートフォンやタブレット端末であればウェットティッシュ等で拭くことができるので、消費者は電子書籍・電子雑誌に流れているのではないか?」という仮説も考えられますが、「家計調査」においては、電子書籍は「他の教育娯楽サービスのその他」として宝くじや検定試験の受験料等と一緒くたにされてしまっているので、家計支出の観点から立証することは難しそうです。ただし、全国出版協会・出版科学研究所が2021年1月に発表した調査結果によると、電子書籍の国内市場規模は2019年の3,072億円から2020年は3,931億円に大きく伸長しています(*2)。もともと成長市場だったことから、コロナ禍における巣ごもり需要だけが要因とは断言できませんが、感染症対策の意識が向上した消費者にとっては、消毒できるかどうかも重要な検討軸になっているのかも知れません。

 また、「家計調査」においては、「入場・観覧・ゲーム代」の2020年の支出額は2019年の35,840円から21,375円に大きく落ち込んでしまっていますが、筆者の家計簿でいうところの「チケット・イベント」は対前年比20%減と何とか踏み止まっています。もちろん、映画館やスタジアム、ライブハウス等に足を運ぶ機会はほとんどありませんでしたが、オンデマンドの配信ライブ等が徐々に充実してきた昨年の夏以降は、その割安な価格設定に背中を押されて、チケットを購入する機会自体はむしろ増えたように記憶しています。そこにはいわゆる「推し」に対する出費も含まれるのですが、チケット単価が下がっていることから、心理的なハードルも低くなっているように筆者自身は感じています。この点については、「家計調査」の生真面目な分類からでは捕捉することが難しいため、民間調査会社によるアンケート結果等を、首を長くして待ちたいと思います。

 振り返ってみると、大学に入学した年の4月から付け始めた家計簿も20年目が視野に入ってきました。当時は自分がパンデミックの渦中を生きることになる未来等は想像だにしていませんでしたが、習慣と惰性の複合物と化していた家計簿が、今般のコロナ禍においては、自身の購買行動を見直す糸口になったことは間違いありません。

 このコラムを書いている2回目の緊急事態宣言のさなかの2021年3月上旬は遠くに春の気配が感じられる時節になりましたが、気軽な外出は憚られる日々がまだまだ続きそうです。ステイホームを引き続き徹底することは難しいかも知れませんが、それでも自宅で過ごす時間が増えているのであれば、もともと家計簿が習慣化していた方はコロナ禍以前の家計簿を引っ張り出してみることを、それ以外の方はクレジットカードや電子マネーの利用明細を遡ってみることを、お勧めしたいと思います。自分が何に価値を見出してきたのか、それは変容したのか、それとも揺るぎないものであり続けているのか……等々、きっと新しい気づきを得ることができるのではないでしょうか。

(*1) 総務省統計局「新型コロナウイルス感染症により消費行動に大きな影響が見られた主な品目など」2021年2月5日
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_rf1.pdf 
(*2) 全国出版協会・出版科学研究所「2020年の出版市場を発表 紙+電子は4.8%増の1兆6,168億円、コミックの拡大で2年連続のプラス」2021年1月25日
https://www.ajpea.or.jp/information/20210125/index.html 

著者紹介
グローバルインフォメーションセンター
肥田 純 Hida Jun

座右の銘は「生涯勉強」。流行りに乗って、最近はクラフトビールとスペシャリティコーヒーに夢中。下手の横好きで続けているフットサルのチームメンバーを募集中。