寄付とこころざしと私

2021年10月25日 平田 桂子

 私はこれまで寄付あるいは募金というものを殆どしてこなかった。
 コンビニのレジ横には「〇〇災害義援金」などと書かれた小さい箱が無造作に置かれている。街頭募金では、見知らぬ人から、さらに別の見知らぬ誰かの為の援助を呼び掛けられる。果たして、援助が必要とされている見知らぬ誰かは実際に存在するのか、また存在していたとして本当に援助が必要な状況なのか、募金団体は集めた寄付金をどう使うのか。私は冷たい人間、ケチな人間なのか?‥‥そんな身も蓋もない疑問を抱きながら募金箱の前を通り過ぎてきた。

 そんな人間が寄付先を探し始めた。
 きっかけは、とある途上国を訪れた際、報道等で取り扱われている社会問題が現実に存在することを実感したことだ。また、その国でNPOや国際協力機関で働く人々と知り合い、活動内容の一部を知ることで、社会問題に真摯に取り組む人・団体の存在も知った。
 そして現在、COVID-19や社会情勢の悪化により、その途上国の人々が苦しむ状況を見て、自分が何かやれることは無いかと考え始めるようになった。そこで手初めに寄付をしてみようと思ったのだが、これまで幾つもの募金箱を通り過ぎてきたせいなのか、寄付先(募金団体)を選ぶ段階で壁にぶつかってしまったのだ。
 信頼できそうな団体はどこか。その団体の取り組みは効果的か。そもそも効果的な取り組みとは何なのか?良かれと思ってやったことが却って迷惑になる可能性もある。あるいは単純に、自分の寄付先の探し方が下手なのか?‥‥そうやって寄付先を吟味している間に、近日までタイミングを逸してしまっている。

 他の人々にとって寄付はどのような存在なのだろうか。日本人の寄付への関わり方を少々探ってみた。
 日本は世界の中でも寄付が少ない国のようだ。英国の団体CAF(Charities Aid Foundation)のレポート「World Giving Index」では、「あなたは先月、寄付をしましたか?」という質問を基点に寄付の有無を国別に指数化し、毎年ランキングを作成している。2020年の調査結果で日本は114か国中の107位だった ¹。また、日本ファンドレイジング協会「寄付白書2017」によると、日本の名目GDPに占める個人寄付額の割合は0.14%で、同じ先進国である英国の0.54%、米国の1.44%と比較しても低い² 。
 寄付する理由については、内閣府「令和元年度 市民の社会貢献に関する実態調査」によれば、過去1年間に寄付したことがある人の59.8%が「社会の役に立ちたい」と回答している³ 。これは私が寄付したいと思う理由と同じだ。逆に寄付の妨げになることは何かという問いでは、「経済的な余裕がない」(50%)を別にすれば、「寄付先の団体・NPO法人等に対する不信感」(24%)、「寄付をしても、実際に役に立っていると思えない」(23%)、「十分な情報がない」(15%)、「手続きがわかりにくい」(12%)という回答が多い(図1)。これも私が壁にぶつかったと理由とほぼ一致する。「社会の役に立ちたい」という気持ちがあるからこそ、寄付先や寄付の効果にシビアな目を向けるのかもしれない。



図1 寄附をするにあたり妨げとなること
(出典)内閣府「令和元年度 市民の社会貢献に関する実態調査」

   


 役に立ちたいという気持ち‥‥偶然か必然か、ふるさと納税のことが気になって、これも少々調べてみた。ふるさと納税は「納税」と名がつくが、自治体への寄付の仕組みだ。総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和2年度実施)」⁴ によれば、確定申告を行わなくても寄付金控除を受けられる仕組み(ふるさと納税ワンストップ特例制度)が始まった2015年度以降、寄付の件数・額が急増したという。ふるさと納税による寄付の理由については、「ふるさと納税に関する調査結果」(NTTコムリサーチ2020年9月調べ)⁵ によると「返礼品への興味」(38.4%)、「節税対策」(31.4%)、「社会貢献への一環」(17.8%)、「出身地への貢献」(11.6%)の順に多い(図2)。「社会の役に立ちたい」に相当する理由は3割程度で、7割は自分に対するメリットということだ。また寄付の阻害要因の一つとなる、控除の「手続きがわかりにくい」点も緩和済だ。さらに、返礼品検索や寄付申込のネット上完結など、ふるさと納税を行える民間ウェブサイトも複数整備され、「十分な情報がない」点も改善された。世界的に見て寄付が少ない日本において、ふるさと納税による寄付の件数が増加している背景には、寄付する側のメリットの多さと阻害要因の少なさがありそうだ。「社会の役に立ちたい」という動機に基づかない寄付があっても良いのかもしれない。



図2 「ふるさと納税」による寄付を実施した理由(単一回答)
(出典)「ふるさと納税に関する調査結果」(NTTコムリサーチ2020年9月調べ)


  
 しかし寄付を受ける側の視点に立つとどうか。ふるさと納税の場合、各自治体は返礼率(送料含む実売価格÷納税寄付額)が高く、魅力的な返礼品を用意することで寄付を増やした。ところが、2017年に総務省が出した通知「返礼率を3割以下に抑えるように」に準拠したことで寄付金が激減してしまった自治体もあるようだ。例えば福島県広野町は返礼率を58%から3割以下に下げた結果、寄付額が20分の1以下になってしまった⁶ 。千葉県勝浦市では返礼品として人気が高かった商品券を終了したため寄付額が約半額に減少した⁷ 。寄付を集める手段が寄付者へのメリット付与に偏ると、そのメリットの内容次第で寄付額が大きく変動してしまう。寄付金は各自治体で医療・福祉・子育て・教育などの分野で活用されているようだが、寄付金の変動が大きいと政策の計画的な推進も難しくなるだろう。

 寄付する側の立場としては、入口は自己へのメリットでも手段の手軽さでもよいだろう。しかし「社会の役に立ちたい」という思いがあるならば、その目的に立ち返ることが大事だと感じる。寄付先の活動記録等を通じて自分の寄付行動を見直したり、より適切な寄付先や、あるいは寄付に限定せずに別の社会貢献の方法を探したりすることで、当初の思いを具現化できるのではないか。
 また、寄付を受ける側の立場では、寄付者へのメリットに注力するのも寄付金集めの一つの効果的な手段となるが、それに依存すると持続的な寄付を受けられなくなるというリスクがある。そのため、寄付を必要とする活動の方針を明確にする、寄付金の使途への理解・関心を高める、といった情報発信や寄付者との双方向のコミュニケーションも同時に注力する必要があるだろう。

 さて、私の気持ちは、今度どんな形にしようか?
(了)

 

¹
https://www.cafonline.org/docs/default-source/about-us-research/cafworldgivingindex2021_report_web2_100621.pdf

²
https://jfra.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/2017kifuhakusho-infographic.pdf

³
https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/r-1_houkokusyo.pdf


https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20200804.pdf


https://research.nttcoms.com/database/data/002157/


https://www.asahi.com/articles/ASM2D3FPZM2DUGTB003.html


https://www.mof.go.jp/pri/research/discussion_paper/ron323.pdf
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/388735
https://www.city.katsuura.lg.jp/info/81

著者紹介
平田 桂子 Keiko HIRATA

食品メーカーを経て、現在は鉄鋼の技術・市場調査業務に携わる。
学生時代は好きを極めることを志向していたが、就職後は新たな経験を増やしたいと思うようになり、これまでに、ボクシング、クラヴマガ、カポエラ、居合、マラソン、ゴルフ、フットサル、バスケ、華道、魚捌き、他・・・多数のアクティビティに挑戦してきた。
現在の興味はバク転、乗馬、テルミン。

寄付とこころざしと私
2021年10月25日