サブスクは私達の生活に定着するのか

2020年9月30日 藤田 すみれ子

 ネットで日常生活の物品・サービスの購入や利用を検討するとき、サブスクリプション(以下、略称「サブスク」と記す)という言葉をよく目にするようになった。
 サブスクとは個々の物品やサービスの所有権を得るために代金を直接支払うのではなく、物品やサービスの一定期間の利用権に対して代金を支払うものが一般的で 、決められた金額を定期的に支払う「定額制」サービスのことを指すことが多い。
 もとは雑誌や新聞等の定期購読を意味する言葉から転じており、主にソフトウェアやデジタル商材の利用形態として広まったが、昨今では消費財を定期的に購入するサービス、自転車や自動車等の耐久財を借りるサービス等にも広がっている。筆者が目にする範囲では急激に勢力を伸ばしているように思われるサブスクであるが、物品・サービスを都度購入する従来の方法に代わる新たな購入方法として定着していくのかを、あらためて本稿で考えてみることにした。

 サブスクと類似している契約形態としてレンタルやリースがある。自動車を例にとり特徴的な部分を中心に比較すると、以下の表の通り整理することができる。
 一定期間、自動車を利用することができる権利を購入するという点では共通している。レンタルはレンタル会社が選定した自動車を不特定の利用者がかわるがわる短期間利用する前提での価格やサービスになっている。また、リースは利用者が選定した自動車をリース会社が購入し、同じ利用者が長期的に利用するサービスが一般的だ。
 サブスクはレンタルやリースと比較すると、契約時には利用期間を定めず、契約後いつでも解約できる点※1 、契約期間中は事業者が所有する自動車の中から自由に自動車を選択して利用できる点、等が特徴となる。そのため利用者は購入以外の選択をするにしても、これらの違いを踏まえた上で、自身の目的にあった契約形態を選択する必要がある。


表 自動車のレンタル・リース・サブスクの比較※2

(注)リースは期間満了時に自動車の所有権が利用者に移転するものとしないものがある
(出所)各社サービスをもとに筆者作成


 話をサブスクに戻すと、サブスクとしての利用率は「動画」「音楽」「電子書籍・雑誌」の順に高い。また利用率はまだ低いもののリアルで利用する物品・サービスのサブスクも現れていて、デジタルコンテンツの利用率には及ばないものの「ファッション」「飲食」「家具・インテリア」「自動車」を提供するサブスクも認知を得られてきたようだ 。※3

 こうしたサブスクは「定額で使い放題」をセールスポイントにしたサービスが少なくない中、利用者の趣向や行動に合わせて最適な物品・サービスのリコメンド(おすすめ)をセールスポイントとしたサブスクも見かけるようになった。
 そのひとつに、Air Closet(エアークローゼット)※4 という定額制の洋服のレンタルサービスがある。サービス利用開始時に利用者のサイズや洋服の着用シーン、好みのスタイル、職業、体型の悩み、その他スタイリストへの要望等を登録することで、事業者の持つ30万着以上の洋服の中から、プロのスタイリストが選んだ洋服が自宅に送られてきて、レギュラープランであれば契約中何度でも借りることができる。また利用者は送られてきた洋服に対する感想をアプリで登録することで、自分の好みに合った洋服を選んでもらえるようになる仕組みになっている。自分に似合う服を探したり、毎日着る洋服を選んだりする時間と手間を削減することができ便利なことに加えて、プロのスタイリストに洋服を選んでもらえるという、なかなかない機会を提供してくれるサービスである。

 このサービスは、筆者と同世代の層の利用が中心のサービスのようだ。筆者個人的には、そうした便利さやチャンスに興味がある一方で、自分の服を自分で選ぶことがそこまで苦にならないと感じており、実際に利用するまでには至っていない。ちょっとした属性や考え方の違いで利用意向に差が出るのだろう。
 同様に、自分で選択するプロセスを楽しみたい物品・サービスは、人それぞれあるのではないだろ うか。例えば、定額料金で映画や音楽が見放題・聴き放題となるサブスクでは、利用者の趣向に基づきお勧めの動画や音楽を提示してくれるが、従来のように友人から勧められることや、自分の見識で好みの動画や音楽を探し当てること自体を楽しんでいる人もいるだろう。

 物品・サービスを選ぶ手間や時間を削減することは、必ずしも全ての顧客にとって魅力的に映るとは限らない。こだわりのあるものは自分で選定するプロセスを楽しむ一方、日常的に使う消耗品等は価格や便利さを求めたいという人も多いだろう。年齢・地域・収入などの基本的な属性だけでなく、細やかな嗜好を踏まえたターゲットの設定と、そのボリューム感を捉えた上で、サブスクのサービスを設計する必要があるように感じる。消費者が上手く使い分けていける方向へサブスクのサービス内容に広がりが出ることを期待している。

※1 最低限の利用期間が定められている場合がある。

※2 特にサブスクについてはさまざまなサービスがあるため、本表では特定企業が提供するサブスクを例としてまとめた。

※3 内閣府調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)「サブスクリプション・サービスの利用状況に関するアンケート結果(2019.12.9)」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/meeting_materials/assets/internet_committee_200205_0003.pdf

※4 エアークローゼット(Air Closet)
https://www.air-closet.com/

著者紹介
藤田 すみれ子 Sumireko Fujita

大学では社会学を専攻し家族の形態や機能を社会学的に分析する家族社会学を研究。
卒業後は通信・IT業界を経て現職。中小企業の海外進出支援、働き方改革等をテーマに研究事業に携わる。